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8.データ変換TIPS

1 IGESファイルによる変換

IGESは、幾何要素と位相要素の中間ファイルのフォーマットを定めただけのものです。3次元CADデータとして、一般的なソリッドモデル(マニ ホールドソリッド)まで記述することができるのですが(上述のレベル3)、トリム曲面(レベル2)までしか記述しないケースがほとんどのようです。
IGESに記述できる幾何要素、位相要素がすべて受け手のCADに読み込めるわけではありません。IGESは幾何要素の数学表現形式や次数、位相要素の方言、位相維持のトレランスなど、送り手と受け手の「差異を吸収する仕組み」ではないのです。

 

2 STEPによる変換

IGESよりは一歩進んで中間データの形式をまとめたものですが、所詮は中間ファイルのフォーマットです。幾何要素、位相要素のほかにフィーチャも 取り込もうとしましたが事実上失敗しています。中間ファイルだけでは、送り手と受け手の3次元CADデータの差異は解決されないのです。

 

3 DXFによる変換

2次元の図形要素を記述のための中間ファイルフォーマットです。ACISを取り込んで3次元にも対応するようになりましたが、3次元CADデータの中間ファイルとしてはまず使えないでしょう。

 

4 STLによる変換

STLは、物体表面を三角形の集合で表したものです。標準のSTLではばらばらの三角形が浮かんでいるだけです。製品表面の映りこみ(法線ベクトルの連続性)まで考慮して設計(モデリング)してもSTLにした途端にその苦労は水の泡になります。

 

5 共通カーネルを利用する変換

CADカーネルが共通なら、カーネル固有のファイル形式でデータ交換が可能です。ただし、ADカーネルを採用しているCADアプリケーションが、カーネル機能を制限している場合には注意が必要です。
例えば、Prasolidは十分な精度を持っておりますので、相当小さな線要素の存在が許されます。しかしUGはCAD仕様として、製品として加工できないほどの小さな線要素や面要素を作るのを禁止しています。
カーネルの仕様が、それを利用するアプリケーションの仕様とイコールではないのです。共通カーネルを介しても、アプリケーション間でデータが共有できる保証はありません。

 

6 フィーチャの変換

対象とするCAD、データを変換する方向、さらに利用してよいフィーチャまで限定すればフィーチャパラ メトリックの変換も可能になるかもしれません。あるいは、JAMA-ISのようにユーザが結束してCADベンダーにフィーチャの標準化を迫れば、案外早期 に変換が可能になるかもしれません。
製造業において、上流工程の設計データを下流工程でどの程度変更してよいものでしょうか。変更が認められないならフィーチャ変換のメリットはなさそうです。工程間(企業間)での3次元形状データ変換の需要はますます伸びると思います。
しかし、フィーチャレベルでデータを受けることができても、それがパス落ちしないCAMデータの作成にどれだけ貢献するのか検討の余地があります。

 

 

7 双方向データ変換

3次元CADデータの変換は、「翻訳」みたいなものです。CAD-AとCAD-Bで概念が異なる場合は「意訳」も行います。
2つのCADシステム間でデータ変換を繰り返すことは、翻訳を伴った「伝言ゲーム」になります。最後に受け取ったメッセージ(3次元CADデータ)がとんでもない内容になっているかもしれません。

 

8 変換前後の表面積・体積の比較

変換前後で、例えば製品形状の物理的特性が維持されたか検証することがあります。CAD-Aで求めた表面積や体積が、変換後CAD-Bでいくらになったかを比較します。
これは無意味だと思います。表面積や体積の計算はそれ自身が近似計算です。当然CAD-AとCAD-Bではアルゴリズムもパラメータも異なるでしょう。トレランスにも配慮すると結構大きな誤差になることが分かります。
例えば、幾何計算のトレランスが0.001mmであったとします。この範囲で幾何要素はどこにいても構いません。一辺10cmの正方形が1000分の1mm動くと体積は、10立方mm変化してしまいます。

 

9 データ変換不具合例の解析

例1)要素間の隙間

要素間の隙間の有無は、設定されたトレランスに対して「相対的」に判断されます。(第5章で2種類のトレランスを紹介しています。)トレランスは、送り手、受け手それぞれのCADが(独立に)設定します。
受け手のトレランスが、送り手のトレランスより小さい場合、送り手では「隙間無し」と判断されたある2要素間の距離が受け手では「隙間有り」と判断されます。

 

例2)微小要素

加工できないほどの小さな「稜線」や「段差」を製品モデル中に作ってしまうことがあります。ほとんどの場合、立体間の集合演算やフィーチャ作成にお いてCADシステムが内部で自動的に作ってしまうものです。同一点トレランスより大きければ、(加工上は無意味でも)計算上は十分意味のある長さになりま す。
トレランスの厳しいCADほどこういった微小要素を問題なく生成していくことができます。小さなトレランスは、要素間に隙間を生じさせないのですが、一方では微小要素の生成を許すことになります。

 

例3)微小セグメント・パッチ

CADで用いられる(パラメトリック)曲線・曲面は、さらに小さな曲線・曲面単位から構成されています。これら単位要素を「(曲線)セグメント」「(曲面)パッチ」と呼びます。
同一点トレランスより小さなセグメントやパッチは、曲線・曲面中に存在しても無意味です。データ量も大きくなり、また種々の幾何計算で悪い影響を与えま す。CADシステムが勝手に生成してしまいます。設定した同一点トレランスとの連動が推測されるのですが、一般にユーザで制御することができない項目で す。

 

例4)自己交差

明示的にユーザが作成した場合を除いて、CADシステムが生成してしまうものです。よくあるケースは三角パッチの頂点位置での自己交差です。開いた扇のように要の向こうとこちらで大小2つの三角形が生じています。
小さな三角形が同一点トレランスより小さければ、この部分は「点に縮退」しているので問題ありません。厳しいトレランスを与えると自己交差した曲面とみなされます。

 

例5)波打ち

1つの曲線(曲面)を構成するセグメント(パッチ)間で折れがあると、がたがたの曲線・曲面になります。1つの曲線・曲面内部では接線連続は保証されるべきなのですが、CADシステムごとに固有の仕様があります。
「折れをOKとするもの」、「折れを許さないが折れを判断する基準角度が緩いもの」、「折れを厳密に許さないもの」になります。基準角度を設定できるCADシステムでは、ユーザが(受け手を意識して)制御することができます。

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